スタンフォード式 最高の睡眠 西野精治
スタンフォード式 最高の睡眠 著者 西野精治 出版社 サンマーク出版
本書では、睡眠研究の最先端であるスタンフォードでの研究に基づき、日本のビジネスパーソンに向けた睡眠改善方法を提案している。 その中で、私が実践できるであろうと思ったもの及び知識として有益であり今後の生活に役立つであろうと思った点を挙げる。
睡眠負債とは
睡眠が足りていない状態を睡眠負債と呼ぶ。
この、睡眠負債を抱えると日中にマイクロスリープが起こり、1〜10秒ほど脳が反応しない状態になる。このマイクロスリープが怒るタイミングは自分ではコントロールできないため、非常に危険である。
時よりショートスリーパーは存在するが、これは遺伝によって決まる。親兄弟がショートスリーパーではない場合は短時間睡眠には気をつけるべきである。
また、自分が「寝不足だ」「次の休みは寝溜めしよう」と思っているのなら、それは睡眠負債を抱えている状態である。
では、寝溜めで睡眠負債を解消できるのか?答えはNOである。アメリカの大学生バスケットボール選手の実験は以下の通りに行われた。
10人の大学生バスケットボール選手に、1日10時間ベッドに入ってもらうのを40日間続けてもらい、日中のパフォーマンスを比較した。 結果は、2週間、3週間、4週間と経過していくにつれて80メートルのタイムは短くなり、フリースロー成功率も上昇。 選手たちは「すごく調子がいい」と言うようになった。
この結果から、この大学生たちは睡眠負債を返済するためには4週間もの期間がかかったと言うことができる。このため、週末の寝溜め程度では到底睡眠負債の返済は完了できないことがわかる。
睡眠のミッション
睡眠には以下のようなミッションがある。
1. 休息をとる
2. 記憶を整理して定着させる
3. ホルモンバランスを整える
4. 免疫力を高める
5. 脳の老廃物を排除する
睡眠は量より質なのか
たくさん寝れば眠気は改善されるのか?パフォーマンスは上がるのか。
現在のグローバルスタンダードでは「量より質」は常識である。
人は眠りに落ちてからレム睡眠、ノンレム睡眠を交互に繰り返す。特に、寝付いて最初の90分に現れるノンレム睡眠が睡眠の中でも一番深い眠りである。
この最初のノンレム睡眠を深いものにすると睡眠の質が高まるのである。
この最初のノンレム睡眠ではグロースホルモン(成長ホルモン)が最も多く分泌され、細胞の増殖や代謝が正常化される。
最初のノンレム睡眠が阻害されると以降の脳波は計測できないほどぶれるため、最初の90分は必ず確保すべきである。
入眠してからノンレム睡眠→レム睡眠
というサイクルは通常4~5回ほど繰り返され、眠りが浅くなるレム睡眠で目覚めると良い。
このサイクル(スリープサイクル)には個人差があり、おおよそ1サイクル90〜120分であると言われる。
眠りの基本
- 日付が変わる前、できれば23時頃に眠りにつくといい。
- 毎日決まった時間にベッドに入る。
でも、忙しくてどうしても夜中作業をしたいということがある。その時は、一旦決まった時間に寝る。その後、黄金の90分を過ぎてから起床し作業をする。
絶対に夜中頑張って明け方に寝るというサイクルはよくない。
良い眠りにつくために
眠りのスイッチを活用する
ポイントは、皮膚温度と深部体温である。この差が覚醒時だと2.0℃ほどあり、睡眠時だと2.0℃以下に縮まる。 以下のようにメリハリをつけると入眠後最初の90分が深くなり、すっきりと目覚められる。 1. 覚醒時は体温を上げる 2. 皮膚温度を上げて熱放散すると深部体温は下がり入眠する 3. 黄金の90分はしっかり体温を下げる 4. 朝が近づくに連れて体温が上昇し、覚醒する
具体的なスイッチの方法は以下に記す。
入眠の90分前に入浴を済ませる
深部体温は上がった分だけ大きく下がろうとする。入浴しない場合は緩やかに体温が下がるが、入浴すると大きく体温が下がる。
忙しくてそんな余裕がない時はシャワーで済ませる。ぬるめのシャワーで深部体温が上がらないようにしてすぐに入眠すると良い。
靴下は脱いで寝る
冷え性だと何枚履いても寒いということがあると思うが、寝る時は必ず脱ぐこと。
履いたままで寝ると熱放散が阻害されてしまう。
モノトナスの法則
モノトナス(単調な状態)にすることは眠るためのスイッチである。退屈であることが有効である。 スマホを見ること自体は悪くはないが、ゲームなど脳を興奮させることが問題である。
睡眠のルーティンを作る
いつも通り同じベッドで同じ時間に、同じ服で、同じ証明と室温で寝る。
ここで、眠れなかったらベッドを離れる。ベッドは睡眠をする場所で、他のことをする場所ではないと脳に認識させる。
明日朝早い!というときはどうするか
「いつも寝る時間」の直前は眠くない
通常就寝する時間の直前から2時間前が最も眠りにくいフォビドゾーンが存在する。
このため、睡眠は後ろにずらすのは簡単だが前にずらすのは困難であるということがわかる。
従って、明日朝早い!という時はいつも通りに寝て睡眠時間を減らすことが有効である。
どうしても!という場合は、1時間早く就寝までのルーティンを終わらせストレッチなどをして体温を上げて就寝する。
よい覚醒のためには
スイッチ① 光
生物の持つサーカディアンリズムは、光によって毎日修正される。光がなければ地球のリズムの乖離してしまい、体温、自立申請、脳、ホルモンの働きが崩れていく。
スイッチ② 体温
体温はサーカディアンリズムの影響を大きく受ける。覚醒時はしっかり体温をお上げておくことが必要である。
アラームは2つの時間でセットする
起きるのはレム睡眠のタイミングがよい。5~7時の間には生理的にレム睡眠が増えており、この時間帯に20分間隔を開けて目覚ましをかけることで高確率にレム睡眠で起きることができる。
目が覚めたらすぐに行動する
目が覚めたら体温を上げて覚醒するためにすぐに動く。そしてサーカディアンリズムを整えるために朝日を浴びるのである。
朝日を浴びることでメラトニン(体内リズムを整え、眠りを推進する物質)分泌抑制が働き、覚醒と睡眠のメリハリができる。
また、この朝日は直接的な日光に限らず陽の光であればよい。
裸足で覚醒
裸足で冷たい床を歩くことで皮膚感覚を刺激し上行性網様体(上行性網様体を刺激すると覚醒する)を活性化する。同時に、皮膚温度を下げることで覚醒する。 同様に、手を冷たい水で洗うのも効果的である。 反対に朝風呂はあまり効果的ではない。もし朝に風呂に入る必要があればシャワーがよい。
朝食をとる
朝食は1日のリズムを整え、エネルギーを補給する役割がある。 スープは体温を上げるので、メニューにはおすすめである。また、噛むことで脳を刺激をし活動にメリハリが出るのでよく噛むものがよい。
コーヒーとの付き合い方
適量のコーヒーは健康によい影響を与えると言われる。朝や午前中のカフェインは覚醒を助けてくれる。しかし、血中のカフェイン濃度は半分になるのに約4時間要するため、睡眠前には注意が必要である。コーヒーをたくさん飲むという人は午後、夕方以降はデカフェに切り替えるのが有効である。
ランチのあとは眠くなる?
スタンフォードの研究によると、ランチは午後2時頃の眠気の要因ではないことがわかっている。
いつもより1〜2時間長くねれば昼に眠気がないということがある。これは睡眠負債が昼の眠気の要因である。
されども、ランチを重く取ってしまうことは血糖値の上昇、覚醒物質の分泌に影響が出てしまうためあまり重く取るのはよくない。
感想
私はロングスリーパーで通常9時間ほど眠らないと寝不足だと感じてしまう。しかし毎日9時間寝ることはなかなかできない。 そんな日本で働くビジネスパーソン向けにすぐに実行できるポイントが挙げてあり、また研究結果などをわかりやすいエピソードと共に書かれているため非常に読みやすかった。